うたちゃん日記

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7.空回り(からまわり)

 配達が終わると店長が作ってくれる食事だ。人数分のおかずがラップにかけられて配膳されている。そこから自分の分を取って、ご飯と味噌汁はセルフサービス。朝から運動をすると腹が空いてくる物だ。いつもお代わりをしてしまう。寮に住んで2日目、すぐに周りの雰囲気にはとけ込めず、どうやらあまり他の人と話をしなかった。先輩は学校がまだ残っていたらしく、食事を取ってさっさと出かけてしまう。仕事の後はそれぞれにやることがあって忙しいのか、周りにあまり干渉しない雰囲気があるように思えた。

 

 あきらは、生来、新聞を読むことが好きだったので、様々な新聞を読んだ。例の業界慣習の新聞交換だ。産経新聞はもちろん、読売、朝日、毎日、日経、あとそれぞれ系列のスポーツ紙と図書館並の紙数。それに全部目を通すと9時くらいにはなってしまう。それから軽い睡魔が襲って来るので昼寝。おなかが空いて昼食。昼食はコンビニで簡単にすませる。食堂で店長からアドバイスというか指示があった。順路取りで回ったところのコースを空回りしておけと。空回りとは昼間の明るい時間にポストの位置を確認したり順路を再確認することだ。あきらは、順路帳を手に取り、自転車で街へ出た。早朝暗い時間に見た街とは全然違う。最初の入口はわかったがそれからはさっぱりわからなくなった。とりあえずわかるところだけで飛ばし飛ばし回って帰って来た。

 

 3時過ぎには店に夕刊が届く。先輩が帰ってくるまで店で待機していた。店長に相談してみる「道が全然わからないんです。」すると店長は「住宅地図があるからそれを見て。」と色々と書き込みの多くてぼろぼろになった住宅地図を差し出した。それでもよく解らなかった。先輩が帰ってきたので夕刊の順路取りに付く。夕刊は前かごにすっぽり入るほど容量が少ない。先輩の配達の様子を見ているとなんとなく簡単に思えてきた。道順さえ覚えてしまえば何とかなるんじゃないかと。夕方の駅前近くは人が多い。そして学校や公園もあるので子供たちも多いのだ。だから自転車はあまり飛ばせない。夕刊をに付いてみて配達順路の概略はなんとなく解ってきたように思えた。先輩は夕食を食べるとさっさと自室へ。あまりあきらに干渉するようなことは避けている、もう卒業してしまうから後は関係ないと思っているようにも思えた。夕食後は住宅地図を見ながら、一軒一軒たどって行く。わからないところは店長に聞いてみる。この家は角から3軒目の家の路地を入って扉の前の赤ポスト。信じられないくらいよく知っている。店長はいざというとき何処でも配達できると言っていた。

 

 2日目・3日目を先輩に付いて回った。荷台には少しずつ新聞が増えていったものの、くっついて回るだけ。道順はだいたいわかって来ている。昼間は例によって空回り。わからない家はほとんどなくなった。4日目からは、メガネの代配さんについて回った。代配とは区域担当者が休みの時に配ってくれる人だ。この販売店では2区域を担当する。つまり週休二日制なので、週の内4日配達で残り3日が休みである。(名目上1日は待機勤務だが寮から遠くへ出かけなければ問題ない。)この店の場合、代配さんは集金無し、営業無しなので、配達以外はまったくの自由時間、とてもおいしい仕事だ。ただし区域担当者が配達できなくなった時は、その区域に入り休み無しとなる。メガネの代配さんは浪人学生からそのまんまずっと学生扱いで勤務を続ける奨学生のなれの果てだった。4日目から7日目まではメガネの代配さんに付いて回った。本当にただ付いて回るだけだ。それ以外なにも教えてくれなかった。店長からはメガネの代配さんに付いて回った人は先行き続かないと言う悪い噂を聞いた。