たびたび『夢のある話題』として登場する『宇宙エレベーター』
ちゃんと計算すると実に簡単に実現不可能なことがわかる。
夢でだまされてはいけない分野である。
大林組HP参照
<現在の技術で想定されている建設方法から>
・ケーブルだけで7000トンの資材を静止軌道まで運ぶ。
その数字が現実的かどうかの検証
※資材運搬に関して
(※国際宇宙ステーションの高度は約400kmである。)
『国際宇宙ステーション』の質量、344トン
『国際宇宙ステーション』の当初の耐用年数、10年(補修して継続使用中)
『国際宇宙ステーション』の建設にかかったロケットなどの打ち上げ回数、50回以上
※ケーブルの現実性に対して
『ケーブル長96000km』単位あたり、1kmあたり73kg
『明石海峡大橋のメインケーブル』の質量、50000トン
『橋梁長3.9km』単位あたり、1kmあたり12820トン
『新幹線のレール』1kmあたり60トン
ケーブルは、カーボンナノチューブを使用するとしているが、所詮炭素をどうつなぐかのことで、『耐熱性・耐火性』『材料としての連続』『耐久性』の研究した記述が少なく、まだまだ『ピアノ線ケーブルの代用品』として使えるのかの研究そのものが少ないようだ。
『ケーブル7000トン』は、期待値で現実性はなさそうである。
カーボンナノチューブは、『14センチで長尺』と呼ばれています。
カーボンナノチューブの長尺化に成功 – 早稲田大学 (waseda.jp)
9万6千キロくっつけるとすると、接着剤の方が重くなりそうな感じです。
<静止軌道まで7000トンの資材を運んでみよう>
H-Ⅱロケットは、1回の打ち上げで2トン静止軌道に運べるとのこと。
この基準だと、3500回のロケット打ち上げが必要になる。
<宇宙エレベーターで、宇宙エレベーターを更新するとどうなる?>
例の大林組の資料だと50人乗りと言う記述(30人と言うのもあった)があるが、いくつかの資料をあたると、それほど輸送力が期待出来なく、速度も新幹線並みとのこと。大林組の資料では最終的に輸送力100トン級のカゴとのことだが、高層ビルでさえ『輸送力5トン、速度60km/h』が最大クラスなので、相当なスペックである。高層ビルでは塔屋(モーター)や壁面(リニア装置)に動力機構を収納出来るが、カゴに動力機構や電源機構、与圧システムをいれたらカゴ自体相当の自重だろう。ケーブルに食いつく摩擦力で自重と輸送加重を支えるのは、そもそも地上付近では不可能ではないか?いくつかの対談型の紹介ページには、『回生ブレーキ』で『重力エネルギー』を有効利用するとか『鉄オタ由来の技術者』の意見もあって泣けてくる。地球より大きいケーブルなので、たとえ複線的な使い方(ケーブルに巻き付くカゴなのであり得ないのだが)をしても、数千キロ間隔(北海道と九州ぐらい離れている)の運転だから、電気回路的に(電線をつないだとしても、そもそもケーブルに電源ないらしいが)そもそもありえない。だいたい地球規模の技術レベルが、海底光ファイバーケーブルにいくつか設置する光信号増幅装置の開発(陸上からの電気回路を必要とする)がやっと熟達してきた程度である。
<仮定>エレベーターの輸送力カゴ1機あたり5トン、36000kmを時速200kmとすると、カゴは15日で1往復出来ることになる。
宇宙エレベーターだけで宇宙エレベーターを更新するとなると、7000トンの資材を運ぶのに、1400往復21000日(57年)かかり、宇宙ステーションの耐用年数が10年くらいなので、宇宙エレベーター更新中に宇宙エレベーターが故障しそうである。
関連リンク
宇宙エレベーター建設構想|季刊大林 (obayashi.co.jp)
リンクから思ったこと。
・技術面ではブレークスルー待ちとのこと。(さりげなく現在実現する技術は無いって書いてある)
・いくつかの期待されているブレークスルーのうち、宇宙エレベーター建設で使うとしている、低軌道から静止軌道までの電気推進エンジンでの軌道遷移が実現すると、静止軌道衛星投入コストが半減(60億円→30億円)するとのこと。
・ブレークスルーをいくつか必要とする『宇宙エレベーター』より、単一のブレークスルーだけで、『宇宙エレベーター』の必要性が無くなる可能性がある。
・電気推進の電源として、低高度では地球重力が大きいため太陽電池パネルでは不可能で、レーザー式やマイクロ波式(地上基地から照射)が考えられるが、そう言う技術は、軍事技術に転用される恐れがあるので、開発そのものが出来ない恐れがある。
・建設に約20年かかると言い切っており、ブレークスルー待ちであるのに、地上に候補地とかを作って、そこに何かを建設してしまう恐れがある。
※このことに国民は多く目を向けるべき
宇宙エレベーターロボット競技会 (space-elevator.tokyo)
・義務教育課程でのプログラミング教育を見据えて、そのひとつを目指している感じ。
総務省|報道資料|「宙を拓くタスクフォース報告書(案)」に対する意見募集の結果及び報告書の公表 (soumu.go.jp)
宙を拓くタスクフォース (もしかしてあべとも?)
P74「宇宙利用の将来像に関する懇話会」開催要綱