うたちゃん日記

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5.新聞店へ引越

 上野にある奨学会の事務所はビルの一室にあって初老のおじさんが対応にあたってくれた。給料が16万円ほど、奨学金が年間60万円ほど、個室の部屋が付いて、朝食と夕食はまかないで支給(食費は実費相当額を給与から天引き)、休日は週休2日と一通りの説明を聞いて、北千住の新聞店を紹介してもらった。後日、新聞店へ挨拶に行く、京成線の千住大橋駅からすぐの昔から下町と言った風情だ。店舗は寮を兼ねた3階建てで、割と新しい。店舗には翌日の朝刊に入れる折り込みチラシで雑然としてはいるものの、よく整理されている。マネージャーと店長が出迎えてくれた。清潔な印象のある食堂で話を聞いた。上司となる店長は穏やかな青年と言った印象だ。マネージャーも店長も学生の時から働いているらしい。

 

マネージャーから新聞配達店について説明があった。「本店は竹ノ塚で経営者もそこにいる。支店はいくつかあってここもそのひとつだ。竹ノ塚店は元々小さな店だったが、今の経営者になってすごい部数をのばしたんだ。奨学生だった人たちが経営者を慕ってそのまま勤めている。竹ノ塚の店長なんか医学部志望の浪人生だったんだ。」どこまでが本当かわからないが、新聞店グループの自慢話に花が咲いた。「配達は自転車で2時間くらいのところを担当してもらう。一週間くらいで仕事を覚えたら、休みをやるから。」「食事は店長が作ってくれるよ。なかなかおいしいぞ。」あきらは、「はい、はい」とうなずきながら、まだ見ぬ世界の厳しさの予兆を感じるのであった。しかしまったく怖い道とは思えず、家から出られることに安心を覚えるのであった。

 それから、あきらは最後の旅をした。このまま新聞配達で大学にいったら、就職するまで旅なんて出来なくなると思ったからだ。上野発のスーパーひたち号に乗りたかったので、常磐線方面の旅をした。そして、とても気分の良い旅となった。なにより、前回の北海道旅行のように何かに逃げての旅ではない。新しい自分の旅立ちを記念する旅行だ。天気も良く景色も清々しく見えた。

 

 旅から帰ると、すぐに引越をした。荷物は一通りの着替え、予備校の教材、そして机ひとつ。マネージャーが亀戸のマンションから、北千住の店まで荷物を運んでくれた。明治通りから墨堤通りへ、いつもバスで乗り慣れた道だが、何かにつながっている道のように思えた。店に着くと、マネージャーは寮にいる人たちに声をかけ、荷物の積み卸しを手伝ってくれた。部屋は3階の6畳だった。他に4畳半の部屋もあって、運の良い待遇だとか。この日から苦労と堕落と妥協の日々が始まった。
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