うたちゃん日記

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2.家出で北海道

 夜遅く駅前交番から電話があった。「飲み屋でお宅のご主人が騒ぎを起こしている。その後居場所がわからなくなっている」と。あきらはすぐさま交番に駆けつけ、それから飲み屋、家の近所を探し回った。自宅はマンションで、近くに公園の公園で、父の靴を発見した。どうやら公園に出没したことは確かなようだ。靴を持っていったん家に帰ると、父が交番で保護されていると言う。交番に向かうとパンツ一丁の父がいた。本人は完全に泥酔していて何もわかっていないようだ。おまわりさんによると、突然飲み屋で脱ぎだしたそうだ。それで店を追い出され街を徘徊していたらしい。おまわりさんからは、浪人の身の息子に同情の言葉がかかる。父が歩けるようになると、あきらはあきれ返って、父を押しながら家につれて帰った。下着のままだった。街の中でこんな恥ずかしいことをしでかした父がとても許せなかったと同時に、亀戸という街にいるのが途方もなく嫌になってしまった。翌朝、マンションの住人から背広やズボンを拾ったと届けられた。完全に自宅にいるのが嫌になってしまった。

 

 父は、かつて国鉄職員でとても誇りの高い人間だった。退職前数年間は、労使交渉の管理職側の急先鋒にいた。国鉄解体前は、人員削減のため部下に退職を斡旋するのが仕事だった。毎日胃の痛むような日々だったようだ。そして最後の国鉄への奉公に、自ら国鉄を退職、関連会社へ再就職していたのだ。ただやる仕事は、国鉄時代と同じで保線現場の監督。国鉄は、JRに移行する際、人を減らすために業務を関連会社に外注していたのだ。ところが、そこも安住の地ではなかったようで、若い者の扱いで毎日苦労の連続だったようだ。元々酒に弱い体質の父だが、国鉄時代末期から次第に酒場通いが毎日のようになり、付け払いが多くなり、ボーナスはその支払いに消えた。退職後は泥酔状態で帰る日が多くなり、とうとうトラブルを起こすようになってしまったのだ。

 

 あきらはすぐさま荷造りを始めた。荷物は着替えと寝袋だけだ。切符は道南ワイド周遊券、20日間有効で、当時宿に困らない夜行がある北海道にした。母にも何も伝言はしていない、つまり家出だ。急行八甲田とはまなすを乗り継けばすぐに札幌に入れた。学生たちが北海道から引き上げて来る時期だった8月の後半なので列車は空いていた。お金が無いので宿なんかには泊まらない。ただ函館と札幌を夜行列車で往復して昼間は街歩きを楽しんだ。寝袋は札幌駅で主に使った。ここは寝袋族のたまり場があって、安全に野宿できるポイントがあるのだ。あとは室蘭駅前の無料宿泊所。バイク乗り向けの施設だったが、誰でも気軽に利用できた。不思議な出会いもあった。寝袋族の友達が地元の女子グループを誘って札幌の夜の街へ遊びに行くというので付いていったが、毎日数時間しか寝ていなかったので、目の前がもうろうとしてきて全然盛り上がらず、あきらだけリタイヤ。浪人中やはり旅をしているヤツとも友達になった。だいたい毎日同じ列車に乗って往復しているから、自然と顔が知れてくるのだ。札幌から室蘭へ行く列車の中では、失恋したばかりの女性に相談を持ち込まれ参ってしまった。函館では、知り合った高校生男子と湯の頭温泉へ。洗い場でこっちの大切な部分をのぞき込むので変だと思っていたが、男子好き男子だと判明。逃げるように駅へ帰って別の土地へ移動。こんなことをして20日間たっぷりと自分が浪人中だというのも忘れ遊びほうけてしまった。
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